【保存版】防犯カメラの歴史

マニアックすぎる防犯カメラの歴史

防犯カメラの誕生から現在に至るまでの歴史的な流れについて、日本における動向を中心にみていきます!

1. 防犯カメラの誕生

世界初の監視カメラは 1933 年にイギリスのアマチュア写真家の Norbury 氏が、自身が飼っていたニワトリの卵を盗んだ犯人を特定するために設置したカメラであるとされています。

それはドアを開けるとあらかじめ仕掛けておいた砂袋の重みによって写真を撮るといった非常に原始的な仕組みでしたが、この仕組みは 1933 年 8 月に法定で有効な証拠と判断され、犯人には有罪判決が下されました。

現在の防犯カメラは動画が一般的ですが、この時はフィルム式のボックスカメラで撮影した静止画でした。

2. 真空管監視カメラの登場

1950 年代、米国のテレビ放送技術の発展に伴い、NTSC によりテレビ放送方式の仕様および標準規格が策定され、これに倣い 1953 年に日本においてテレビ放送が開始しました。

被写体の像を電気信号に変換する、撮像管を用いたテレビカメラが使用され、これにより映像を電気信号として伝送できるようになりました。

これらの技術革新が土台となり、1957 年に現パナソニックが、世界で初めて真空管を用いた監視カメラを製品化しました。

3. CCD イメージセンサの誕生

1970 年 4 月に米国ベル研究所のボイル氏とスミス氏によって CCD(Charge Coupled Device=電荷結合素子)が発表されました。

当時ソニーの副社長であった岩間和夫は CCD に将来性を見出し、

CCD を使って 5 年以内に、5 万円のビデオカメラをつくるんだ。

ソニー「ソニーグループについて」

と、本格的な開発開始の大号令をかけました。

現在でも監視カメラの多くはソニー製のイメージセンサ・画像処理チップが搭載されていることが多く、この開発は後の防犯カメラの発達を促しました。

4. キャッシュディスペンサーの登場と防犯カメラの導入

1975 年 11 月に都市銀行・地方銀行・相互銀行が共同出資した「日本キャッシュサービス」がキャッシュディスペンサーの営業を開始しました。

駅やデパートなどに設置され、これを機にキャッシュディスペンサーが普及し、それに伴いキャッシュディスペンサーを監視する目的で防犯カメラの導入が進みました。

しかし、当時はまだ CCD が実用化されていなかったため、カメラ本体は真空管を用いた大掛かりなもので、映像は白黒で画質も悪く、また記録媒体は磁気テープでした。

5. 防犯カメラの国内普及

1985 年 1 月にソニーが CCD を搭載したカメラ一体型 8 ミリ VTR「CCD-V8」を発売して以降、CCD の量産が始まり、民生向けのカムコーダー(カメラと記録媒体が一体型になったビデオカメラ)が普及しました。

CCD の実用化により、防犯カメラは小型化・低価格化・カラー化が進み、デパートなどの大型商業施設にも普及しました。

その後、1995 年の地下鉄サリン事件を契機に防犯意識が高まり、駅やマンション、コンビニへの導入も増え、防犯カメラの普及はさらに加速しました。

6. ビデオカメラのデジタル化

CCD の普及後も、カメラ内部の信号処理はアナログ回路でしたが、1994 年に家庭用のデジタルビデオの規格として「DV」が発表され、その後 1995 年にソニーが世界初 DV方式のデジタルビデオカメラレコーダー「DCR-VX1000」を発売しました。

また、1997 年にパナソニックがデジタル化に対応した監視カメラ、スーパーダイナミックシリーズを発表するなど、デジタル信号処理を利用したカメラが登場し、高性能化とさらなる低価格化が進みました。

7. ネットワークカメラの誕生

1996 年にスウェーデンのアクシスコミュニケーションズが世界初のネットワークカメラ、「Neteye200」を発表しました。

これにより監視カメラはネットワークにつながることで、遠隔での映像確認が可能となりました。

Neteye200 は非常に評判が良かったのですが、既にアナログカメラを所有しているためすぐに導入ができないユーザーが多くいました。

このことを受け、アクシスコミュニケーションズは 1998 年に世界初のビデオエンコーダを発売しました。

ビデオエンコーダは既存のアナログカメラの映像信号をデジタルに変換し、ネットワークで伝送するための装置で、これによりアナログカメラと最新の IP 技術の統合を可能にしました。

さらに、1999 年には組み込みシステム用の Linux OS が搭載された「AXIS 2100」が発売され、ネットワーク製品の設計方法に基準が打ち立てられました。

AXIS 2100 は当時世界で最も人気を誇り、5 年連続で首位を獲得しました。

8. H.264 の登場

H.264 は動画圧縮規格の1つで、ITU-T では、「H.264」として 2003 年に初めに勧告され、ISO/IEC では、ISO/IEC 14496-10「MPEG-4 Part 10 Advanced Video Coding(通称:MPEG-4 AVC)」として規定されていますが、どちらも技術的には同一のものです。


この圧縮技術により、従来方式をはるかに凌ぐ圧縮効率が実現され、低ビットレート下においても高画質な映像の伝送が可能となりました。

9. 業界標準化団体「ONVIF」の設立

2008 年、アクシスコミュニケーションズ、ボッシュ、ソニーにより、ネットワークカメラをはじめとしたセキュリティ製品のインターフェースの規格標準化フォーラム、「ONVIF(Open Network Video Interface Forum)」が設立されました。

ONVIF は IP をベースとしたセキュリティ製品間の通信の標準化、メーカーに依存しない相互運用、全ての企業・組織にオープンであること、これら 3 つを基本理念として掲げています。

10. ネットワークカメラ優位に

富士経済(2014)によると、2013 年の国内監視カメラ市場は数量、金額ともにネットワークカメラがアナログカメラを上回っています。

富士経済(2017)によると、2017 年にはネットワークカメラが国内監視カメラ市場の約 7 割を占めており、2020 年には 350 億円の市場規模が見込まれています。